目次
- 1 こんなセミナーでした!
- 2 観光客の心を惹きつける浅草の歴史・伝統・文化
- 3 浅草の魅力を発信する
- 4 今後挑戦していきたいこと
- 5 MACHIBIYAインタビュー
- 6 まとめ
こんなセミナーでした!
POINT1:受け継いできた伝統と新たな文化の形成
POINT2:各ソーシャルメディアの役割を考えた活用方法
POINT3:広報戦略は目標設定が大切
第62回MACHIBIYAセミナーは、一般社団法人浅草観光連盟の広報担当理事・事務局次長を務めていらっしゃる飯島邦夫(いいじまくにお)氏をお迎えして、東京イチの観光地浅草をどのように発信しているのか「広報戦略成功の秘訣」についてご講演いただきました。
観光客の心を惹きつける浅草の歴史・伝統・文化
現在日本を訪れる訪日客が増えていますが、浅草にも多くの訪日客が訪れています。今や東京を代表する観光地となった浅草ですが、いつの時代も多くの人で賑わっていたというわけではありませんでした。
娯楽の少なかった江戸時代、浅草寺の観音様への参詣や三社権現御礼祭などの行事に人々が集まり食事処や土産屋が出来た浅草は娯楽のまちとして発展していました。しかし大正23年の関東大震災や昭和20年の東京大空襲により浅草は多くの被害を受けてしまいます。戦後、浅草は焼け野原からの復興を遂げますが東京オリンピック開催の頃、カラーTVの出現により娯楽は家でも見られるようになり、浅草は信仰をする人だけが訪れるまちになってしまいました。
そんな浅草を再び繁栄させようと動いたのが浅草の人々でした。「絶対に我々には歴史と伝統と文化がある」という信念のもと、今まで受け継いできた行事に加えて、行事がない月には泣き相撲や投扇興の大会などの新たな行事を作りました。また浅草のまちなみも江戸まち風に改装し、浅草全体を歴史と伝統と文化で溢れるまちへと変えていきました。
最近ではFREE Wi-Fiを仲見世通り10ヵ所に設置し、ムスリムの人向けのマップを作成するなど浅草を訪れた訪日客がより快適に浅草を楽しめるための取組も行っています。
浅草の魅力を発信する
2006年、飯島氏が浅草観光連盟のWEBサイトを構築しましたが、それまでの浅草の情報発信の手段はまちに貼ってあるポスターのみでした。そこで飯島氏は浅草の情報をしっかりと伝えていくために浅草で行われる行事などを掲載するWEBサイトを作り出しました。また2010年にはTwitter、2011年にはFacebookの利用を開始しました。試行錯誤しながら情報発信をしていく中で飯島氏はある一つのことに気が付きました。それは「ガイドブックに載っていることを載せても面白くない」ということです。それ以降は出来る限りガイドブックには載っていない情報を各ソーシャルメディアで発信するようになりました。
2014年にはYouTubeでも情報発信を行うようになりましたが、その際も「普通にはない情報をあげる」という事を意識し、東日本大震災の翌年から行っている外国人向け避難訓練の様子や手ぬぐいの選び方、茶道の様子などをアップしています。
また様々な方法で情報発信を行っていく中で、WEBとソーシャルメディアの違いを理解しました。
◎飯島氏が考える各ソーシャルメディアの役割
〇Facebook
・投稿はよほど興味をひくものでない限り拡散されない
・投稿後3日後しか読まれない
・いいねをもらえないと拡散できない
〇Twitter
・特定の分野の記事は、その分野の仲間たちを通じて拡散される
〇g⁺
・大手グーグルが手掛けているため、ちゃんと情報を載せていれば検索エンジンの上位に来る
〇Instagram
・「#」を有効に活用する必要がある
〇YouTube
・ソーシャルメディアなど様々な方法を使って拡散しないといけない
・拡散する仕組みを付けないといけない
各ソーシャルメディアの役割を踏まえ、飯島氏は23年間IT企業にいた経験と以前からあるWEBサイトを活用し、各ソーシャルメディアの記事の保管庫として「365ASAKUSA」を開発しました。
365ASAKUSAには各ソーシャルメディアで発信した情報が転載され常に情報が更新されます。随時情報が更新されることはWEBのページを増やすことにも繋がるため、検索エンジンでも常に上位に掲載されるようにもなります。
また投稿を自動化し、自動翻訳の機能を付けたことで多言語対応の問題も一気に解決することが出来ました。
1ページを見てサイトを離れる人の割合を表す「直帰率」は365ASAKUSAを始めた当初、65.11%と平均的な数字でしたが現在では6.16%と大きく改善され色々なコンテンツを見てくれる人が増えています。また各ソーシャルメディアで情報発信を行っていくうちに、日本テレビやNHK、CNNなど国内外のメディアから多数取材を受けるようになりました。メディアを利用し世界中に発信することで、メディアから興味を持ってくれる人々がおり、現在浅草を訪れる訪日客は多くの国から増え続けています。最近ではカルビーから「都道府県の味」というご当地のポテトチップスを作る際に、浅草の味のポテトチップスを作りたいという依頼を受けるなどメディア以外の様々な業界からも声をかけてもらえるようになりました。
さらに個店も地域の魅力の一つであると考えており、365ASAKUSA内では地域の魅力をアップするコンテンツとして個店や郷土料理、特産物を紹介しています。この他にも現在は、賛助会員の募集を365ASAKUSA内で行ったり、アプリを開発して旅中も浅草を楽しんでもらえる仕組みを作っています。
また今回は、多くの人を魅了し続ける浅草の情報発信を行っている飯島氏が考える「広報戦略成功の秘訣」を教えていただきました。
◎飯島氏が考える「広報戦略成功の秘訣」
・ソーシャルメディアで情報発信、コミュニケーションすることは独立した仕事として考える
・地域に訪れるお客様にはしっかりと必要な情報を届ける
・担当者は人柄を出してフレンドリーに
・数値目標を設定し、短期間に改善を繰り返す
・毎日の投稿で他地域を圧倒する情報発信が効果的
いくつかの秘訣がありますが、特に大切なことは評価基準・目標を設定することです。細かい目標設定をし、情報発信の専任者を決めることで短期的に改善を行うことが出来ます。
今後挑戦していきたいこと
今後より多くの方に浅草を訪れてもらうためには、どうやって話題を作っていくかが重要であり、現在は浅草内で利用できる地域通貨の開発を考えています。
また浅草を訪れる訪日客はバックパッカーが多く、安いお店やホテルを利用する傾向があり浅草内のお店にお金が落ちないという課題もあります。この課題を解決するための仕組みも現在考えています。
さらに今後は、着物の着方や帯の締め方、歌舞伎の見方など日本の伝統文化をより多くの人に知ってもらうためのコンテンツも作っていきたいと思っています。
MACHIBIYAインタビュー
オススメの本は、「浅草を広報してわかったインバウンドマーケティングに足りないこと~スマートフォンが観光を変える!~」(飯島邦夫 著)
オススメのまちは、「ポルトガルのリスボン」
大事にしている言葉は、「やっちゃいなさい」
まとめ
今回のセミナーでは、様々な分野での事業運営を経験され、23年間IT会社に勤められていた飯島氏だからこその情報発信の方法を学ばせていただきました。
広報戦略成功の秘訣は、日常的にソーシャルメディアを利用している私たちにとって、とてもためなるものばかりでした。質疑応答の時間には多くの質問が飛び交い、参加者にとってとても有意義な時間となりました。
◆講師プロフィール
飯島 邦夫(いいじま くにお)氏(一般社団法人浅草観光連盟 広報担当理事 )
ソーシャルメディアやWeb、リアルを組み合わせたマーケティング手法で、様々な分野で事業の立ち上げを経験。 IT資産管理ソフトウェアの「クオリティ株式会社」で2014年まで常務取締役を務め、中国上海では「闊利達軟件(上海)有限公司」の総経理を2008年から2011年まで務める。また、玄米菜食レストラン”たまな食堂”、自然食ネット販売などを手掛ける「クオリティライフ株式会社」の代表取締役を2011年から2012年まで務める。 2015年には独立してEwil Japanを設立、代表取締役に就任。三社祭の主催団体「浅草神社奉賛会」では事務局次長を務められている。現在は 「一般社団法人浅草観光連盟」で広報担当理事・事務局次長として、浅草の三社祭や観光事業を企画運営とともに浅草の行事情報や動画をソーシャルメディアなどを通じて世界へ配信している。365ASAKUSAを展開中。